茶店に足を運ぶと、棚に「鉄観音」の文字が並んでいる。これらの茶葉が全て同じ茶樹から作られていると思っていないだろうか?実は驚くべき事実がある。福建省安渓県では、鉄観音の製造に使われる茶樹の品種は二十数種類にも及び、本物の「鉄観音茶樹」から作られた茶葉は、鉄観音全体の生産量のわずか三割に過ぎないのだ。この名前の背後には、想像以上に複雑な系譜が隠されている。
「鉄観音」という響きの良い名前が、安渓一帯で鉄観音の製法で作られた茶に冠されるようになった。本山、毛蟹、梅占、黄金桂⋯⋯これら異なる血統の茶樹でも、同じ製茶工程を経れば、市場では「鉄観音」として流通する。目利きでない消費者は、「鉄観音韻」を飲み分けることができず、購入したものが「本山種」であっても、それが本物の紅芽鉄観音かどうか判別できないのである。
福建と台湾:二つの異なる定義
「鉄観音」の位置づけについて、福建と台湾では根本的な違いがある。『茶事遍路』の著者・陳舜臣はこう述べている。「福建では、鉄観音は茶樹の名前であり、鉄観音種の茶樹から作られた茶を『鉄観音』と呼ぶ。台湾では、一定の製茶法で作られた茶を『鉄観音』と呼ぶ。前者は茶樹による命名、後者は製法による命名である」
しかし、この説明だけでは不十分だ。実際には、福建安渓で流通している鉄観音も、全てが「鉄観音茶樹」から作られているわけではない。現地の茶農家たちは、茶葉の血統が純正であるかどうかより、消費者に認められることこそが重要だと心得ている。市場メカニズムに駆動される中で、「鉄観音」であるか否かは、もはや自由裁量の問題となっている。果たして、誰が正統なのか?
純種と正欉:曖昧になる境界線
福建省茶葉研究所が発行する『茶樹品種志』には、鉄観音について科学的な記述がある。「鉄観音は別名、魏飲種、紅心観音、紅様観音とも呼ばれ⋯⋯」これらの名称が指すのが、「純種の」鉄観音である。ところが、茶産地で生産される「純種」と、市場で流通する「正欉」との境界線は、消費者の嗜好の変化とともに次第に曖昧になってきた。
台湾では、「正欉」を識別条件としている。台北市鉄観音包種茶研究開発推進センターによれば、木柵茶区は鉄観音茶の生産を主とするが、収穫期の人手不足から、少量の四季春、武夷、梅占、金萱なども栽培しており、これらも鉄観音と称している。区別するため、鉄観音茶樹から作られた茶を「正欉鉄観音」と呼ぶようになった。正欉鉄観音の茶樹は特徴が明確で、横張枝、葉面の皺、主葉脈が中心からずれていること、葉縁の鋸歯が不規則であることなどが挙げられる。
名称をめぐる争い:誰が決めるのか?
福建の「南岩」であれ、台湾の「正欉」であれ、これらの命名に拘束力はない。鉄観音の名声が高まる今日、誰もが自分の茶葉に「正統」の看板を掲げたがるが、本当の鉄観音とは一体何なのか?
様々な鉄観音の品種は、全てこの名前の恩恵を受けている。茶愛好家にとって、異なる茶樹の葉の違いを理解することは、切手収集家が様々なデザインの切手に魅了されるのと同じく、純粋な喜びと楽しみであるはずだ。茶の品種を見分けるには、葉の形、厚さ、色、光沢、縁の形状などが判断材料となる。お湯で淹れた後、茶葉が再び開いた姿を観察することも、「茶の功」を深める内面的な修養なのである。
消費者は、似たような茶葉を見分けるために時間をかけるべきだ。「聞いた話」だけで茶を選ぶのではなく、自分の目で確かめることが、茶を選ぶ力を大きく高める。次に「鉄観音」の文字を目にしたとき、その背後に隠されているのは、一体どの茶樹の物語なのか、考えてみてはいかがだろうか。
