茶葉専門店に入ったとき、FOP、BOP、CTC などの英語の略語を目にして、「いったいどう違うの?」と戸惑ったことはありませんか?これらの記号は、実は国際的な茶葉等級制度に基づく重要なコードです。この分類方法を理解することで、茶葉の品質を見極め、理想の一杯を見つける手助けとなります。

茶葉グレード制度の基本原理

茶葉のグレードは、主に「摘採部位」「葉の完全性」「加工方法」という3つの要素に基づいて分類されます。この等級制度は、英国植民地時代に生まれたもので、現在でも国際的な茶取引の基準として広く用いられています。グレードは茶葉の見た目だけでなく、風味や価格にも直接影響します。

FOP(Flowery Orange Pekoe) は「フラワリー・オレンジ・ペコー」の略で、若芽と二葉からなる茶葉を使用した、全葉等級の中でも最高ランクです。白毫を含む新芽が豊富で、茶湯は澄んだ明るい色合い、香りも上品で長く続きます。

BOP(Broken Orange Pekoe) は「ブロークン・オレンジ・ペコー」の略で、茶葉を細かくした「ブロークンティー(砕けた茶葉)」の代表的な等級です。製造工程で茶葉が揉まれて小さくなりますが、香味成分はしっかりと保たれ、短時間で濃い味わいを抽出できます。日常のお茶に最適です。

CTC(Crushing, Tearing, Curling) は近代的な機械製法によって作られた茶葉で、「押しつぶす、引き裂く、丸める」という3工程を経て、粒状に加工されます。主にティーバッグ用として用いられ、素早く濃厚な茶湯を抽出できます。

このあと、それぞれの等級に含まれる細かい分類や、特徴、実際の購入時にどう活かすかなど、より深く解説していきます。

全葉グレード:本来の風味を引き出す究極の等級

茶葉の等級制度において、全葉グレード(ホールリーフ)は最も高品質とされます。FOP はその代表格で、「一芯二葉(芽と2枚の若葉)」のみを丁寧に摘採し、葉の形を崩さずに製造されます。このため茶葉の自然な香りと味わいが最大限に活かされます。

さらに上位の FTGFOP(Finest Tippy Golden Flowery Orange Pekoe) は、金色の新芽(ティップ)が大量に含まれ、「紅茶のシャンパン」とも称される極上品です。生産量が少なく、価格も高めですが、その品質は一級品。茶湯は琥珀色で、香りと味に奥行きがあり、紅茶愛好家やコレクターに人気です。

OP(Orange Pekoe) は FOP より等級はやや下がりますが、十分に高品質な茶葉です。新芽は少なく、大きめの葉を使用しますが、味はしっかりとしており、コストパフォーマンスに優れています。85〜95℃の湯で3〜5分ほど抽出することで、茶葉がゆっくり開き、豊かな香味を楽しめます。

ブロークンティー:品質と実用性を兼ねた賢い選択

砕かれた茶葉(ブロークンティー)は、全葉に比べて抽出が早く、日常使いに適しています。BOP(Broken Orange Pekoe) はその代表で、ほどよく砕かれているため、短時間でしっかりとした味わいが出せます。

BOP の中にもさらに細かい分類があります。例えば、FBOP(Flowery Broken Orange Pekoe) は新芽を多く含み、全葉に近い風味を持ちます。GBOP(Golden Broken Orange Pekoe) は金色の新芽が多く含まれており、香りと味により深みがあります。

さらに細かいグレードとして BOPF(Broken Orange Pekoe Fannings) があります。粒が非常に細かく、短時間で濃厚な茶湯が出るため、ミルクティーやチャイのようなミルクやスパイスと組み合わせる紅茶に最適です。

砕かれた茶葉は、90〜95℃のお湯で2〜3分ほど抽出すれば十分です。ただし、抽出が早い分、時間をかけすぎると渋みが出やすいため、時間の管理がポイントです。

CTC製法と現代のティーカルチャー

CTC(Crushing, Tearing, Curling) は近代的な機械製法であり、茶葉を粒状に均一に加工することで、抽出のスピードと濃度を大幅に向上させます。

最大のメリットはその速さ。1〜2分で濃い紅茶ができるため、ティーバッグや即席紅茶の原料として世界中で使われています。インドやスリランカなどの大規模茶園では、CTC製法が主流となっており、世界的な需要に応えています。

風味の繊細さでは全葉に劣ることもありますが、CTC の紅茶は色が濃く、味がしっかりしており、ミルクティーなどに非常に適しています。有名な「イングリッシュ・ブレックファストティー」なども、この製法がよく使われます。

忙しい現代生活において、CTC は理想的な紅茶体験を提供してくれます。特別な茶器や時間がなくても、手軽に濃厚な紅茶を楽しむことができます。

実用的な購入ガイド:グレード知識の活用法

等級制度を理解したら、次は実際の購入にどう活かすかがポイントです。まず、自分のライフスタイルや好みを明確にしましょう。風味をとことん追求したい方には FOP 以上の全葉茶 を。使いやすさを重視するなら BOP 系のブロークンティー を。手軽さが第一という方には CTC が最適です。

購入時はグレード表示だけでなく、茶葉の見た目や香りも確認しましょう。良質な茶葉は色にムラがなく、異物や粉末が少ないのが特徴です。乾いた茶葉の香りを嗅いでみて、爽やかさや産地特有の香りが感じられれば、良品といえます。

価格も一つの目安になりますが、グレードが高いほど価格も高くなります。また、新芽の比率が多い茶葉ほど価格も上がる傾向があります。ただし、最も重要なのは自分の好みに合うかどうか。高価な茶葉が必ずしも自分に合うとは限りません。

最後に、信頼できる専門店やブランドから購入することをおすすめします。品質の保証があるだけでなく、適切な淹れ方のアドバイスももらえるため、安心して楽しめます。茶葉のグレードを知ることは始まりにすぎません。本当の楽しみは、それぞれの茶葉がもたらす個性的な風味を自分の五感で感じ、茶の世界の奥深さを体験することなのです。

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