台湾茶の世界で、高山烏龍茶と凍頂烏龍茶はまさに双璧をなす存在です。ひとつは現代の高地創新を象徴し、もうひとつは伝統技術の粋を今に伝えています。清らかな香りで若者を魅了する高山烏龍と、深い余韻でベテラン茶人を虜にする凍頂烏龍。1980年代の「茶葉地殻変動」において、主流の座を凍頂が譲り、高山烏龍が市場の頂点を奪取しました。

歴史的地位の興亡

凍頂烏龍茶は台湾茶業史におけるクラシック。1894年の『雲林県採訪冊』では、凍頂山に多くの茶樹が植えられており、藍廷珍は「気味清奇にして暑毒を解し、腹脹を消す。佳品なり」と称賛しました。150年もの樹齢を持つ茶樹は、直径20cm・高さ一階建てにも及び、今なお製茶が可能。地元ではこの茶樹を、武夷山から進士・林鳳池が祖先・林三顕への恩に報いるため持ち帰ったものと語り継がれています。

1979年、蘇石鉄が販売した凍頂烏龍茶(半斤800元)は「高価だが最高品質」とされ、現在も凍頂ファンにとっての憧れの茶です。

1980年代、台湾は正式に高地茶時代へ突入。「高山烏龍茶」という名称は、梨山で果樹園を経営していた陳金地が、蔣介石総統に毎年水梨を献上する過程で偶然茶苗を導入した際、命名に迷い「高山烏龍茶」と呼んだことに由来します。

高地の豊かな土壌と気候条件により、高山茶は品質で優位に立ち、中海抜の凍頂烏龍に代わり台湾茶の代名詞となったのです。

テロワールの違い

最も顕著な違いは標高にあります。凍頂烏龍茶は南投県鹿谷郷で標高700~800m、高山烏龍茶は1,000m以上の高地で育てられます。

高地は昼夜の寒暖差が大きく、霧が多く日照時間が短い環境。日中の光合成で養分を蓄積し、夜間の低温で呼吸作用が抑えられるため、栄養素がしっかり保持されます。また、雲霧が強光を遮り、茶葉の成長をゆっくりにすることで、葉の組織がより繊細になります。

土壌の有機質含有量も高地の方が明らかに多く、茶樹の乾物質の90~95%を占める有機物において、豊富な窒素・リン・カリウムを吸収した高山茶は内含成分がより豊かです。

製茶技術の差異

もう一つの大きな違いは発酵度です。凍頂烏龍茶は中程度の発酵で、濃厚な果実香と深い余韻を持ちます。一方、高山烏龍茶は軽発酵が主流で、自然の香りを際立たせ、茶ポリフェノールも多く残されています。

市場の嗜好の変化により、中発酵の凍頂から軽発酵の高山へと潮流が移行。「香りを楽しむ」ことが主流となり、台湾市場を席巻しました。このトレンドは中国福建省にも影響を与え、「台湾風烏龍茶」の製造が始まったほどです。

品質の比較

高山烏龍茶は清らかな香りが特徴で、山の気配を感じさせる上品さを持ちます。凍頂烏龍茶は果実のような甘い香りとコクのある余韻が魅力です。

熟成された凍頂は発酵の「韻」が深く、まさに通好みの味わい。高山烏龍は甘くまろやかで、いわゆる「山頭気」があり、速やかで持続する後味が特徴です。

また、凍頂茶は8回以上の抽出でも安定した味を保ち、1回ごとの抽出率は約24%と非常に高い耐久性を誇ります。

結論

高山烏龍茶と凍頂烏龍茶は、それぞれ台湾茶の歴史と未来を象徴しています。高山は香りで現代を魅了し、凍頂は奥深い風味で歴史を語る。香りを好むなら高山、コクを求めるなら凍頂。台湾茶は、これからも革新と伝統の間でバランスを取りながら進化していくでしょう。

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