棚に並ぶミネラルウォーターは、価格も産地もさまざまで、ラベルにはいろいろな数字が印刷されています。でも、じっくり読み込む人はほとんどいません。お茶を淹れるとき、水が大切なのはなんとなくわかっていても、キャップを開ける前に、その数字が何を意味しているのかを知っている人は少ないのではないでしょうか。


水の良し悪しは、目で見ただけではわからない

古人は水を見分けるとき、視覚と味覚に頼っていました。澄んでいるか、飲んで甘いか、冷たいか。その判断は的外れではありませんでしたが、わかるのは水の表面的な状態だけです。水に溶け込んでいるミネラル塩類は、分子やイオンの形で存在しており、目には見えません。古人が求めた「清と潔」は、現代の言葉で言えば、濁りや色合いを見ていたに過ぎず、浮遊物質やコロイド状の物質は感覚では判断できません。

だからこそ、現代の水質指標が必要とされます。水質の鑑定に使われる主な指標は五つ。浮遊物質量、溶解固形物、硬度、アルカリ度、そしてpH値です。この五つの数字が、水の本当の自己紹介です。

天然水にはカルシウムやマグネシウムの炭酸水素塩、硫酸塩、塩化物などがイオンの状態で溶けています。その含有量は化学分析によってのみ確認できますが、市販のミネラルウォーターの多くは、ラベルにこれらの数値を記載しています。ただ、目を向ける人が少ないだけで。

その数字は、ボトルの裏側でひっそりと、読まれるのを待っています。


pH値と硬度が、お茶を淹れるときの核心

ミネラルウォーターでおいしいお茶を淹れたいなら、まず注目すべき指標はpH値と総硬度の二つです。

pH値は水の酸性・アルカリ性を示します。茶のポリフェノールは酸性の水では安定していますが、アルカリ性の水では酸化しやすくなります。アルカリ度が高いと、茶葉のポリフェノール類が酸化縮合を起こし、茶液の色が黒ずんで苦渋くなります。お茶の抽出に適しているのはpH値が5未満の水で、総硬度が5度以下、塩類土壌でない地域の地表水であることが理想的な条件とされています。

硬度の問題はさらに複雑です。軟水はミネラル分が少なく、茶葉の有効成分が溶けやすいため、茶液の色が明るく、香りが清々しくなります。一方、硬水にはカルシウムやマグネシウムが多く含まれ、茶葉成分の溶解度が下がるため、茶液が濁りやすく、渋みが出やすくなります。純水の環境では、ポリフェノールとアミノ酸の溶出量がもっとも高くなります。

また、鉄や銅などの金属イオンが多く含まれる水は、ポリフェノールの酸化を促進し、本来は抗酸化作用を持つ成分を逆効果にしてしまいます。水を選ぶ際に見落としてはならない点です。

硬水にも種類がある。沸騰させれば解決するわけではない

硬水には二種類あり、この違いを知っておくと日常の水選びに役立ちます。

「一時硬水」は炭酸水素カルシウムや炭酸水素マグネシウムによるもので、沸騰させると成分が析出して沈殿し、硬度が下がって軟水に近づきます。「永久硬水」はカルシウムやマグネシウムの硫酸塩や塩化物によるもので、加熱しても硬度は変わりません。

冷たいときは甘くすっきり感じたミネラルウォーターが、沸かしてお茶を淹れると味が変わってしまう——そんな経験をお持ちの方もいるかもしれません。永久硬水であれば、沸騰させても茶液への影響は改善されません。

口当たりで判断するより、ラベルの硬度数値を確認するほうが、ずっと確かな選び方です。

自分で試してみることが、いちばんの近道

市販のミネラルウォーターは、輸入品も国産品も、高価なものも手頃なものも、それぞれ異なる水源と成分構成を持っています。ブランドや価格だけでは、お茶に向いているかどうかは判断できません。

もっとも確かな方法は、pH値と硬度が表示されているミネラルウォーターをいくつか選び、適した条件と照らし合わせて候補を絞ること。そのうえで同じ茶葉を使い、それぞれで淹れてみて、茶液の色・香り・味わいの違いを静かに観察することです。

さらに試してみたいのは、pH値の低い軟水で緑茶と青茶をそれぞれ淹れたとき、どんな香りや味の違いが出るか、という問いです。茶葉の種類によって成分構成は異なり、水との相性も一様ではありません。そこに、探る楽しさがあります。


水を選ぶことは、誰かの推薦に頼らなくてもできます。ボトルの裏側に書かれた数字が、すでに十分な手がかりを与えてくれています。あとは手に取って読んでみて、一杯淹れて確かめるだけ。水とお茶のあいだの正直な対話は、そんな静かな比較のなかで、少しずつ姿を現してきます。

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